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飲食店の運営
飲食店の平均売上は?業種別のデータや計算方法、売上低迷時の改善策を詳しく解説

飲食店は競争が激しい業界であり、安定した経営を続けるには売上予測を立てることが重要です。実際の売上が予測を下回る場合はその原因を探り、早急に対策を講じる必要があります。まずは「自店の売上はいくらか」「どのくらいの売上が必要か」を把握することから始めましょう。
この記事では、飲食店の平均売上や計算方法とともに、売上が低迷する原因とその改善策について詳しく解説します。自店の状況と照らし合わせながら、必要な改善の方向性を考えてみてください。
【業種別】飲食店の平均売上
日本政策金融公庫のデータをもとに、飲食店の平均売上(従業員1人当たりの売上高)を下表にまとめました。この表では一般飲食店を「食堂/レストラン」「そば・うどん店」「すし店」「喫茶店」「その他の一般飲食店」の5業種に分類し、それぞれの業種の平均売上をまとめています。
業種
従業者1人当たり売上高
食堂/レストラン
926万円
そば・うどん店
759万円
すし店
1,007万円
喫茶店
876万円
その他の一般飲食店
1,039万円
※千円未満切り上げ
また、同データにおける一般飲食店(上記5業種)の平均売上は「923万円」となっています。上表のとおり業種によって多少異なるものの、一般的な飲食店の平均売上は年間で「900万円強」(従業員1人当たり)といえそうです。
例えば、1〜2人体制で経営する個人飲食店であれば、年間で1,000〜2,000万円ほどの売上が目安となるでしょう。この場合の「1日・月・年間」の平均売上を下表にまとめましたので、それぞれどのくらいの売上が必要となるのか参考にしてみてください。
【個人飲食店の売上目安】
1日の平均売上
2.7〜5.5万円
月の平均売上
83〜167万円
年間の平均売上
1,000〜2,000万円
店舗規模や立地による売上の違い
飲食店の平均売上は「年間900万円強」と説明しましたが、これはあくまで統計上の数値にすぎません。実際の店舗売上は、業種や規模、立地条件など、さまざまな要素によって大きく変動します。あくまで一つの目安と捉え、自店の状況に合わせた判断が必要です。
次項では、飲食店の平均売上をどのように算出するのか、その計算方法を解説します。実際のケースを想定し、自店の目安となる平均売上を計算してみましょう。
飲食店における平均売上の計算方法

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ここでは、目安となる平均売上(売上予測)の計算方法を解説します。実際の店舗経営において売上は日ごとに変動しますが、まずは基本となる計算方法を押さえておきましょう。
売上の計算式
飲食店の1日当たりの売上は次の計算式で算出できます。
売上 = 客単価 × 席数 × 回転数
売上は「客単価」「席数」「回転数」の掛け合わせとなるため、客単価が高くても席数や回転数が少なければ売上は伸びにくく、反対に客単価が低くても席数や回転数が多ければ売上アップにつながりやすくなります。
月間売上のシミュレーション
水曜定休のレストラン(ランチ/ディナー営業)を想定し、1か月の売上金額をシミュレーションしました。自店の状況に当てはめて算出すれば、現状の月間売上を、客単価や回転数を調整することで目安となる平均売上を把握できます。
区分
1日の売上
営業日数
月間売上
昼(月〜金)
900円 × 20席 × 0.6回転 = 10,800円
16日
172,800円
昼(土日)
1,000円 × 20席 × 0.8回転 = 16,000円
8日
128,000円
夜(月〜木)
3,000円 × 20席 × 0.8回転 = 48,000円
12日
576,000円
夜(金〜日)
4,000円 × 20席 × 1.0回転 = 80,000円
12日
960,000円
合計
1,836,800円
売上を伸ばすために必要な3つの視点
飲食店が売上を伸ばすためには、「客数」「客単価」「リピーター」の3つの視点から、日々の運営や戦略を見直していくことが重要です。単に売上目標を設定するだけではなく、要素ごとに具体的な施策をバランスよく講じることが、継続的に安定した売上を確保するための鍵となります。
ここでは、飲食店が重視すべき3つの視点について詳しく解説します。
客数を増やす
売上を伸ばすうえで基本となるのが「客数」を増やす施策です。飲食店が新規顧客を呼び込むためには、消費者からの認知度を高める施策が必要です。SNSを使った情報発信や近隣へのチラシ配布、イベント出店など、オンライン・オフライン両方の集客施策を行い、お店の強みや魅力を積極的にアピールしましょう。
また、一度来店したことのある既存顧客に対し、次の来店を促すことも重要です。新規顧客だけに注力せず、既存顧客をターゲットとした集客施策もあわせて行い、売上の安定化を目指しましょう。
客単価を上げる
飲食店が売上を伸ばすには、客単価を上げる施策も欠かせません。同じ客数であっても、客単価が上がれば売上も伸びるため、一人当たりの支出を増やす工夫が必要です。
客単価アップにつながる施策には以下のようなものがあります。
- ・メニュー価格を値上げする
- ・注文に関連したセットメニューを提案する
- ・特別なコースへのグレードアップを促す
- ・高価格帯のメニューを取り入れる
重要なのは、売上と同時に顧客満足度も高めることです。単なる値上げや押し付けではなく、「顧客に価値を感じてもらえる提案」を行い、自然な形で客単価を上げることが大切です。
リピーターを育てる
飲食店経営を継続するうえで、一時的な売上増加では意味がありません。売上を安定させるには、自店のメニューやサービスに好感を持ち、繰り返し来店してくれる「リピーター」の育成が不可欠です。
具体的な施策としては、既存顧客を対象とした特典やポイントカードの導入、期間限定クーポンの発行などが考えられます。スタッフが名前を覚えて声をかけたり、好みに合ったメニューを提案したりするのも効果的です。顧客に「また行きたい」と思ってもらえるよう、接客の質や店舗の体験価値を高める工夫を行いましょう。
飲食店が平均売上を下回るときの原因と改善策

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飲食店の売上が平均を下回る場合、主な原因としては「集客不足」「客離れ」「経費の高騰」が考えられます。「売上がなかなか伸びない」「一時的に上がってもすぐに落ちてしまう」などの課題がある場合は、これら3つの観点から売上低迷の原因を特定し、具体的な改善策を講じることが重要です。
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【集客不足】顧客の来店動機をつくる
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集客不足を改善するためには、お客様が店舗に来店する動機をつくることが大切です。多くの選択肢があるなかで、「あのお店に行きたい」と思ってもらうには、魅力的なメニュー開発や期間限定のキャンペーンなど、顧客の来店動機となる施策を打ち出していく必要があります。
また、InstagramやLINE公式アカウントを通じて定期的に情報を発信したり、Googleビジネスプロフィールの内容をアップデートしたりと、オンライン上での店舗の存在感を高める施策も効果的です。これらの施策を通じて“来店のきっかけ”を増やすことが、安定した集客基盤の構築につながります。
【客離れ】QSC(品質・サービス・清潔さ)改善で再来店を促す
QSCは飲食店が重視すべき基本的な要素であり、「Quality(品質)」「Service(サービス)」「Cleanliness(清潔さ)」の頭文字を取っています。これらは顧客満足度に大きく影響し、リピーターを育てるうえでも欠かせない要素です。一度きりの来店で終わってしまうことが多く、なかなか再来店につながらない場合は、以下のような施策を取り入れてQSCの改善・向上を目指しましょう。
Quality(品質)を高める施策
- ・旬の食材や地域の特産品を使ったメニューを開発する
- ・料理の味や盛り付けを安定させる
- ・レシピや調理手順を標準化する
Service(サービス)を高める施策
- ・ベテランスタッフによるOJTで接客の質を向上させる
- ・キャッシュレス決済やオンライン予約システムを導入する
- ・オペレーションの見直し・改善を行う
Cleanliness(清潔さ)を高める施策
- ・店内の清掃を徹底する
- ・食品・食器の衛生管理を徹底する
- ・清掃・消毒のタイミングを記録する
【経費の高騰】適正な原価管理や人員配置でコストを抑える
原材料費や人件費などの経費の高騰は、飲食店の利益を大きく圧迫する要因となっています。これに対応するためには、仕入れ先の見直しや適切な価格設定、人員配置の最適化、ツール導入による業務効率化などに取り組み、コストを抑えながらも料理やサービスの品質を維持することが大切です。従来の価格を続けるよりも、状況に応じた価格調整やコスト管理を行い、無理なく利益を確保することを目指しましょう。
以下の記事でも飲食店が売上を上げる方法について詳しく解説していますので、自店に必要な施策を考えるときの参考にしてください。
関連記事:売上を上げる方法とは?飲食店が取り組むべき施策と売上アップの原則を徹底解説
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飲食店経営における「売上以外」の重要指標
飲食店経営においては、売上以外にも重視すべき指標がいくつかあります。
ここでは、飲食店オーナーが特に把握しておくべき「FL比率」「営業利益率」「損益分岐点売上高」について解説します。
FL比率
FL比率とは、売上に対する「食材費」と「人件費」の割合のことです。
一般的な飲食店のFL比率は60%程度といわれており、この値が高いほど利益は圧迫され、低いほど経営に余裕が生まれることになります。飲食店が利益率を高めるためには、売上に対してどのくらいFLコストがかかっているかを把握し、適切なコスト管理を行うことが重要です。
FL比率を算出する計算式は次のとおりです。
FL比率 =(食材費 + 人件費)÷ 売上高 × 100
営業利益率
営業利益とは、粗利益から営業活動にかかる経費を差し引いた利益のことです。
売上に対する営業利益の割合を「営業利益率」といい、店舗の収益性を測る指標として活用できます。
営業利益率を算出する計算式は次のとおりです。
営業利益率 (%) = (営業利益 ÷ 売上高) × 100
損益分岐点売上高
損益分岐点とは、売上と経費が同額で、利益がちょうどゼロになる売上高のことです。
これを算出することで売上が経費を上回る(=黒字になる)水準がわかり、店舗経営の健全性を測る指標として活用できます。
損益分岐点売上高を算出する計算式は次のとおりです。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
(※変動費率 = 変動費 ÷ 売上高)
飲食店の利益率や損益分岐点については以下の記事でも詳しく解説し、実際の数値を用いたシミュレーションを行っています。本記事とあわせて参考にしてください。
関連記事:飲食店の利益率とは?計算方法・低い原因・改善策をまとめて解説
まとめ
一般的な飲食店の平均売上は、従業員1人あたり「年間900万円強」とされています。ただし、この数値はすべての店舗に当てはまるものではなく、業種や店舗規模、立地条件などによって大きく変動します。あくまで目安として捉え、自店の状況に基づいた売上予測を算出することが大切です。
そして、実際の売上が予測を下回っている場合には、集客施策やサービス内容、コスト構造などを見直し、早めに改善策を講じる必要があります。短期的な売上回復だけにとらわれず、長期的な安定経営を見据えることが重要です。
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