飲食店の廃業率はなぜ高い?廃業を回避する方法から撤退判断のポイントまで詳しく解説 | 飲食店運用のヒント:店タク

  • 飲食店の運営

    飲食店の開業率・廃業率は他の業種に比べて高く、相対的に“参入しやすく撤退しやすい”傾向にあります。低コストで始められる反面、他店との競争が激しく、資金繰りや人材確保、集客など日々の経営には多くの課題が伴います。長期にわたって安定した経営を続けるには、想定外のリスクや経営悪化に備えた対策をあらかじめ講じておくことが重要です。

    この記事では、飲食店の廃業率が高い理由や廃業を回避する方法、撤退判断のポイントまで詳しく解説します。飲食店経営のリスクを知りたい方や、長く続けるためのヒントを探している方の参考になれば幸いです。

     

    飲食店の廃業率はどれくらい?

     

    中小企業庁の小規模企業白書(2022年版)によると、宿泊業を含む飲食業の廃業率は5.6%であり、全産業の中で最も高い水準となりました。同時に、開業率の17.0%も他産業と比べて圧倒的に高く、飲食業界は新規参入が盛んな一方で撤退する事業者も多い、“出入りの激しい業界”であることがわかります。

     

    産業分類

    開業率

    廃業率

    宿泊業、飲食サービス業

    17.0%

    5.6%

    生活関連サービス、娯楽業

    7.6%

    4.5%

    金融業、保険業

    3.2%

    4.0%

    小売業

    4.8%

    3.9%

    電気・ガス・熱供給・水道業

    6.3%

    3.9%

    情報通信業

    6.1%

    3.7%

    学術研究、専門・技術サービス業

    5.4%

    3.5%

    不動産業、物品賃貸業

    6.2%

    3.2%

    卸売業

    3.1%

    3.1%

    サービス業

    4.3%

    3.0%

    建設業

    5.0%

    2.9%

    製造業

    1.9%

    2.7%

    鉱業、採石業、砂利採取業

    1.3%

    2.7%

    教育、学習支援業

    5.3%

    2.6%

    医療、福祉

    4.0%

    2.3%

    運輸業、郵便業

    3.2%

    2.3%

    複合サービス事業

    0.9%

    0.9%

    参照元:2022年版 小規模企業白書(HTML版)第2節 中小企業・小規模事業者の現状|中小企業庁

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    2. 飲食店が廃業に至る主な理由5つ

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    4. 数ある業種の中で、なぜ飲食店は特に廃業率が高い水準にあるのでしょうか、

      飲食店が廃業に至る主な理由として次の5点が挙げられます。

    • ・資金繰りの悪化
    • ・人手不足
    • ・集客不足・リピーター不足
    • ・経営ノウハウ不足
    • ・外部環境の変化

    これらの理由について以下で詳しく解説します。

     

    1. 資金繰りの悪化

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    3. 飲食店が廃業に至る主な要因の一つに「資金繰りの悪化」があります。特に開業初期は販促や設備投資などに多くの資金が必要となり、軌道に乗る前に運転資金が枯渇するケースも少なくありません。さらに近年は、物価上昇の影響で原材料費や人件費が高騰し、想定以上に支出が膨らむ傾向が続いています。このような状況で売上が伸び悩むと、資金繰りは急速に悪化し、事業継続に深刻な影響を及ぼしてしまいます。

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    5. 人手不足

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    7. 帝国データバンクが実施した「人手不足に対する企業の動向調査」によると、2025年1月時点で非正社員が「不足」と感じている飲食店の割合は60.7%と、業界別で2番目に高い水準となりました。飲食業界では慢性的な人手不足が続いており、これが廃業率の高さや事業継続を困難にする大きな要因となっていることが読み取れます。

      加えて、飲食店などのサービス業は「長時間労働」「低賃金」といったイメージを持たれやすい業界です。求人を出しても応募が集まらない、採用しても人材が定着しないという課題を抱える店舗も多く、人手が足りずに営業時間の短縮や営業日数の削減を余儀なくされ、最終的に廃業に至るケースもあります。

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    9. 集客不足・リピーター不足

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    11. 飲食店が安定した売上を確保するには「新規顧客の獲得」と「リピーターの維持」の両方が必要です。しかし、競争が激しい飲食業界では新規の顧客が思うように集まらず、来店してもリピートにつながらないという悩みを抱える店舗も多く見られます。特に個人経営の店舗では、効果的な集客施策が打てずに競合店に埋もれてしまうことがあります。集客が不十分だと売上が伸び悩み、継続的な運営に支障をきたすリスクが高まります。

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    13. 経営ノウハウ不足

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    15. 店舗運営において、経営ノウハウの不足は廃業につながる大きな要因の一つです。原価管理や利益率の確保、人材マネジメント、マーケティングなど、日々の運営に必要な知識やスキルは多岐にわたります。しかし、飲食店は新規参入のハードルが低いため、計数管理や戦略立案が不十分なまま開業に踏み切るケースも少なくありません。その状態で事業を始めると、次第に収支のバランスが崩れ、適切な対策を打てないまま経営が悪化していくおそれがあります。

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    17. 外部環境の変化

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    19. 自店を取り巻く外部環境の変化も、飲食店が廃業に至る主な理由の一つです。例えば、近隣に人気の競合店がオープンした、社会情勢の変化で外食需要が大きく低下したなど、自店ではコントロールできない要因が売上低迷に直結することもあります。特に、コロナ禍では多くの飲食店が影響を受け、立て直しができないまま廃業を選ぶケースが続出しました。このような外部環境の変化に柔軟に対応できなければ、廃業に追い込まれる可能性が高くなるでしょう。

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    22. 飲食店の廃業率を下げるために今できること

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    2. 飲食店が廃業率を下げるためには次のような対策が必要です。

    • ・固定費を抑える
    • ・コンセプトとターゲットを明確にする
    • ・QSCを向上させる
    • ・外部リソースを活用する
    • ・環境変化に対応できる体制をつくる

       

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    • ここでは、廃業リスクを減らし、安定した経営を続けるために取り組むべき具対策を紹介します。

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    • 固定費を抑える

    飲食店の経営を安定させるためには、売上が落ちても耐えられるコスト設計が欠かせません。なかでも固定費は、一度見直すことでその後の支出を継続的に抑えられ、経営の安定性が高まります。家賃や人件費、光熱費などは見直しの優先度が高く、例えば家賃の交渉や人員配置の最適化、省エネ設備の導入などが有効な手段となります。固定費を低く抑えることができれば、一時的な売上減少にも持ち堪えられる体力が備わり、廃業リスクの軽減につながります。

     

    コンセプトとターゲットを明確にする

     

    飲食店を成功へ導くためには、明確なコンセプトとターゲットの設定が欠かせません。市場調査や顧客アンケート、地域の競合分析などを通じて顧客ニーズを把握し、それに応じたメニューやサービスの設計、他店と差別化できる独自の魅力を追求することが重要です。ブレない軸があれば顧客の信頼や共感を得やすくなり、集客力の向上や経営の安定化にも寄与するため、廃業を回避できる可能性が高まります。

     

    QSCを向上させる

     

    QSCとは「Quality(クオリティ:品質)」「Service(サービス:接客)」「Cleanliness(クリンリネス:清潔さ)の頭文字を取った言葉です。質の高い料理や丁寧な接客、清潔な店舗環境など、QSCを高める取り組みは顧客満足度の向上に直結し、口コミによる新規集客やリピーターの獲得にもつながります。安定した売上基盤を築くうえで欠かせない要素であり、飲食店の廃業率を下げるためにも重要な取り組みといえるでしょう。

     

    外部リソースを活用す

     

    慢性的な人手不足や経営ノウハウの不足は、飲食店の廃業率を押し上げる要因の一つです。特に小規模の店舗では日々の業務に追われ、経営改善や業務効率化に取り組むリソースが不足していることも少なくありません。こうした課題を解消するには、飲食店経営に詳しい外部の専門家やサービスを活用し、経営課題に対する助言を受けたり業務の一部を委託したりするのが効果的です。また、店舗運営そのものを信頼できるパートナーに委ねるという選択肢も、廃業を回避する一手として検討の余地があるでしょう。

     

    環境変化に対応できる体制をつくる

     

    飲食業界は社会情勢や顧客ニーズの変化といった外部環境の影響を受けやすく、環境変化に柔軟に対応できなければ経営リスクが高まる傾向にあります。特にコロナ禍においては、外出自粛や営業時間短縮の要請を受け、テイクアウトやデリバリーサービスの需要が急増しました。こうした予期せぬ環境変化に対応できる体制を整えておくことが、売上の確保や顧客満足度の維持につながり、ひいては廃業率の低減にも大きく寄与すると考えられます。

     

    廃業時の選択肢と撤退戦略

     

    飲食店を廃業する際には、事業の終了以外にもさまざまな選択肢があります。ここでは、廃業時に検討できる主な手段と、冷静な撤退判断を行うためのポイントを紹介します。

     

    飲食店の廃業における主な選択肢

     

    飲食店の廃業時に検討できる選択肢には次のようなものがあります。

    選択肢

    概要

    解散・清算

    営業を完全に終了し、資産・負債を整理して事業を閉じる方法

    事業売却

    自社の事業を第三者に売却し、引き継いでもらう方法

    居抜き譲渡

    内装や設備を残した状態で店舗を譲渡する方法

    業態転換

    現在の業態から、より収益性や需要のある形態に変更する方法

    運営委託

    自らは運営から退き、信頼できる第三者に店舗運営を任せる方法

    完全にお店を閉じる選択肢だけでなく、事業の形を変えて継続したり、運営を他者に委ねたりといった柔軟な対応も視野に入れることで、廃業以外の道を見出せる可能性があります。自店の経営状況や今後の方向性に応じて、最適な方法を見極めることが大切です。

     

    撤退判断のポイント

     

    撤退判断を下すうえで重要なのが、前もって「撤退ライン(損切りライン)」を明確に設定しておくことです。特に「売却」や「譲渡」といった選択肢を視野に入れる場合は、店舗の資産価値が落ちる前に行動することが求められます。売上や利益率など客観的な数値を基準に撤退の目安を決めておくと、いざというときにも自分の意思や状況に流されず、冷静かつ的確な判断ができるようになります。これにより撤退時の混乱を最小限に抑えるとともに、精神的・金銭的な負担を軽減し、次のステップへの移行を円滑に進めることができます。

     

    【実例】廃業から学んだ経営者のリアルな声

    飲食店を取り巻く環境は年々厳しさを増しており、さまざまな事情から廃業という決断に至るケースも少なくありません。ここでは、廃業を決めた理由や背景、経営者の思いなどを、実際の事例を通して紹介します。

     

    ①コロナ禍の売上減少で廃業を決めた事例

     

    地方で複数の飲食店を経営していたAさんは、コロナ禍での急激な売上減少をきっかけに廃業を決断しました。コロナがいつ収束するかわからない状況において、自社の資金繰りでは限界があり、融資を受けたとしても返済の見込みが立たなかったといいます。廃業そのものに後悔はないものの、売上が大きく落ち込んだ際の対応やリスクへの備えについては、もう少し真剣に考えておくべきだったと振り返っています。

     

    ②人気店が「人手不足」を理由に廃業を決めた事例

     

    2023年に廃業したB食堂は、豊富なメニューや営業時間の長さ、手頃な価格設定で長年地元の人々に愛されてきた人気店でした。こうしたスタイルは多くの常連客を惹きつけていましたが、深刻な人手不足により事業の継続が困難に。営業を続けるためにさまざまな選択肢を検討しましたが、最終的には「お客様のために築いてきたスタイルを守ったまま店を畳む」決断に至りました。これまでの方針を変えることなく、お客様に愛されたお店のまま静かに幕を下ろしたのでした。

     

    店タクでは「店舗運営を任せたいオーナー」と「腕のある職人」とのマッチングを支援しています。廃業を決断する前に、信頼できる職人に店舗運営を委ねるという選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。

     

    >>>店タク|職人と「組む」新しい飲食店の運営

     

     

    まとめ

     

    飲食店経営の成功と失敗を分ける大きなポイントは「準備」と「継続力」にあります。市場調査や資金計画、明確なコンセプト設計など、事前の準備をしっかりと行うことが経営を安定させ、廃業を回避することにつながります。また、外部環境や顧客ニーズの変化に柔軟に対応しながら、地道に努力を重ねる継続力も欠かせません。

    加えて、経営の悪化を防ぐためには、あらかじめ撤退ラインを設定しておくことも重要です。廃業時にはさまざまな選択肢がありますが、腕のある職人に店舗運営を委託することで、撤退を回避し事業を継続できる可能性が高まります。こうした柔軟な対応と的確な判断が、厳しい市場で生き残るための鍵となるでしょう。

     

    店タクは飲食店オーナーが抱える店舗運営の悩みを「職人と組む」ことで解決するサービスです。人材不足や売上低迷などの課題を抱え、事業の継続に不安を感じている方は、店タクで新しい店舗運営を始めてみませんか。

     

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