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飲食店の運営
飲食店の利益率とは?計算方法・低い原因・改善策をまとめて解説
「売上があるにもかかわらず、赤字になる月が続く」──そんな悩みを抱える飲食店は少なくありません。赤字が慢性化する原因の一つに挙げられるのが「利益率の低さ」です。利益率とは、売上に対してどれだけの利益を確保できているかを示す指標であり、これを正しく理解することは経営の健全化に欠かせません。
この記事では、利益率の計算方法や業界平均とともに、飲食店が利益率を改善するための具体的な施策を紹介します。利益が思うように残らず、経営の不安定さを感じている場合は、まずは利益率の現状を把握することから始めましょう。
【飲食店】利益率の計算方法と業界平均
利益率とは、売上高に対する利益の割合を「%」(パーセント)で表したものです。飲食店が安定経営を目指すには、利益率を正しく把握し、その数値をもとに経費や収支バランスを見直すことが求められます。
まずは飲食店における利益率の計算方法と業界平均について解説します。
粗利益率の計算方法
粗利益とは、売上高から原材料費などの売上原価を差し引いた利益のことです。
粗利益が売上高に対してどのくらいあるかを示す指標を「粗利益率」といい、以下の計算式を用いて算出できます。
粗利益率 (%) = (粗利益 ÷ 売上高) × 100
具体的にどうやって算出するのか、以下のデータを用いて実際に計算してみましょう。
【飲食店Aの月間データ】
売上高:100万円
売上原価:35万円
粗利益 = 100万円 − 35万円 = 65万円
粗利益率 = (65万円 ÷ 100万円) × 100 = 65%
この飲食店の粗利益率は65%となります。
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飲食店の利益率相場
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経済産業省の「商工業実態基本調査」によると、飲食店全体の営業利益率(平均)は8.6%と報告されています。規模別で見ると、大企業は3.6%と低く、中小企業は11.4%と比較的高い水準を維持しています。
一般的に、飲食店が安定経営を目指すうえでの目標利益率は10〜15%とされており、それと比較すると多くの店舗が目標を下回っているのが実情です。次項では、こうした「利益率が低い原因」について、具体的な要因を挙げながら詳しく解説していきます。
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利益率が低い主な原因とその影響
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飲食店の利益率が低下する背景にはさまざまな経営課題があります。ここでは、特に利益への影響が大きい4つの課題を紹介します。
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原材料費の高騰
飲食店の利益率が低い原因の一つに、原材料費の高騰による仕入れコストの増加が挙げられます。近年、異常気象や国際的な紛争などの影響を受けて食材価格が上昇傾向にあるため、以前と同じ価格でメニューを提供していては、同じ売上であっても実質的な利益は減っていくことになります。利益率を改善するためには、こうした外部要因にも柔軟に対応し、環境の変化に合わせて仕入れやメニュー戦略を見直していくことが重要です。
人件費の高騰
人件費の高騰も利益率への影響が大きく、働き手の確保も含めて飲食店にとって大きな課題の一つです。最低賃金の引き上げや人手不足による採用競争の激化により、スタッフの給与や採用コストなどの人件費が上昇し、固定費の負担が重くなっています。営業を継続するには人員の確保が必要ですが、かといって採用や待遇に過剰なコストをかけてしまうと、利益が圧迫されて経営が成り立たなくなる可能性があります。
回転率の悪化
客席の回転率は、飲食店の利益率を大きく左右する重要な要素となります。席数は限られているため、回転率が悪化すると時間当たりの売上が伸び悩み、結果として利益も圧迫されてしまいます。
一方で、店舗によっては長居を前提としたコンセプトを掲げているケースもあります。このような店舗で回転率を上げようとすると、顧客満足度の低下やリピート率の減少につながるおそれがあるため、必ずしも回転率の改善がすべての業態に当てはまるとは限らない点に注意が必要です。
集客力の不足
集客力が不足している飲食店では、売上減少と利益率低下が同時に起こり、店舗運営そのものが不安定になります。来店客数が少なければ、家賃や人件費といった固定費の負担が重くのしかかり、資金繰りが難しくなるリスクも高まります。また、新規顧客の獲得に成功しても、それがリピーターにならなければ安定した経営は実現しないため、利益を上げるためには常連客を増やすための集客施策を講じることが不可欠です。
飲食店の利益率を上げるための改善策
飲食店が利益率を改善するためには、次のような施策を講じる必要があります。
- ・原材料費の見直し
- ・メニュー価格の値上げ
- ・効率的な人員配置
- ・業務の効率化・自動化
- ・滞在時間と客数のバランス調整
- ・集客施策の強化
単に売上を伸ばすだけでなく、店舗運営のあらゆる側面に目を向けることが重要です。
これらの施策について以下で詳しく解説します。
原材料費の見直し
飲食店が利益率を上げるためには、原材料費の見直しと原価率の最適化が欠かせません。仕入れ先はある程度固定されがちですが、定期的に複数の業者を比較検討し、コストパフォーマンスの高い仕入れルートを模索しましょう。特定の仕入れ先に依存せず、代替ルートを確保しておくことが大切です。
また、季節ごとの旬の食材や地域の特産品を活用した限定メニューを導入するなど、原価を抑えつつ顧客の満足度を高められるようなメニュー戦略も欠かせません。こうした取り組みは集客効果もあるため、新規顧客の獲得やリピーターの増加にも寄与します。
メニュー価格の値上げ
原材料費や人件費の高騰が続くなかでは、メニュー価格の値上げをはじめとする「適切な価格設定」が不可欠です。ただし、値上げを行う際には事前に告知を行い、値上げに見合った価値を提供することが求められます。
ぐるなびが2022年に実施した外食の値上げに関する調査によると、値上げは「仕方がない」が54.9%、「(値上げは)当然」が17.7%という結果になりました(回答者:20代~60代のぐるなび会員1,000名)。飲食店としては値上げによる客離れを懸念しがちですが、実際には「多少の値上げは仕方ない」という声が多く、適切なタイミングと丁寧な説明があれば顧客の理解を得ることは十分に可能です。
関連記事:値上げによる客離れを防ぐには?飲食店が実践すべき対策を徹底解説
効率的な人員配置
飲食店が人件費を抑えるためには、曜日や時間帯、混雑状況に合わせた効率的な人員配置が欠かせません。ピークタイムの混雑する時間帯には必要な人員をしっかりと確保し、一方でアイドルタイムには最小限の人数で回すなど、メリハリのあるシフト管理が求められます。
店舗の状況に応じた適切な人員配置は、人材を最適に活用できるだけでなく、スタッフ一人ひとりへの過度な負担を避けられ、定着率の向上にもつながります。
業務の効率化・自動化
飲食店の利益率を改善するには、日々のオペレーションを見直し、非効率な作業を減らしていくことも重要です。これまで紙ベースで行っていたアナログな管理方法を見直し、在庫管理システムや予約システムといったデジタルツールを導入することで、業務の効率化・自動化を図ることができます。
これらのシステムは業務効率を高めるだけでなく、発注ミスや食材ロスの削減、予約時のダブルブッキングの防止などにもつながります。結果として無駄なコストを削減し、店舗運営の安定化や利益率の改善に寄与します。
滞在時間と客数のバランス調整
長居を前提としたコンセプトを除き、過剰な滞在時間による回転率の悪化は収益機会を減らす要因となり、店舗の売上や利益を圧迫してしまいます。特に小規模店舗においては、限られた席数をいかに効率よく回せるかが鍵となるため、顧客の滞在時間を適正な範囲で調整・管理することが重要です。
例えば、テーブルの大きさや配置の変更、BGM・照明の調整、料理の提供スピードの見直しやオペレーションの改善など、顧客の滞在時間に影響する要素を見直し、快適さを損なわずに回転率を高める工夫が求められます。
集客施策の強化
飲食店が利益率を高めるためには、新規顧客の獲得とリピーターの育成を同時進行で行い、安定的に来店客数を増やしていくことが大切です。飲食店における効果的な集客施策としては以下のような取り組みがあります。
オンライン施策の一例
- ・SNS運用(Instagram、LINE公式アカウントなど)
- ・Googleビジネスプロフィールの最適化
- ・オンライン広告の活用
- ・口コミ・レビューの促進
- ・メールマガジンの配信
オフライン施策の一例
- ・折り込みチラシや地域情報誌への掲載
- ・看板広告の活用
- ・ポイントカードの導入
- ・地域イベントへの出店
- ・店内イベントの開催
以下の記事でも飲食店の集客方法やユニークなアイデアをまとめていますので、本記事とあわせて参考にしてみてください。
関連記事:飲食店の集客方法12選!成功のポイントや面白いアイデアをまとめて紹介
集客に不安がある場合は、店舗運営をサポートしてくれるパートナーを「店タク」で探すことも一つの方法です。エリア・業態・売上目安などから、お店の現状や条件にマッチするベストパートナーを見つけることができます。
飲食店なら知っておきたい「損益分岐点」
損益分岐点とは、売上と経費が同額となり、利益がちょうどゼロになる売上高のことです。これを上回れば黒字、下回れば赤字となるため、店舗経営の健全性を測る重要な基準となります。
ここでは、飲食店オーナーが知っておくべき「損益分岐点」の計算方法と重要性について解説します。
損益分岐点の計算方法
損益分岐点の計算には「固定費」「変動費」「売上高」の各数値が必要です。
これらの数値を用いて、以下の計算式から算出します。
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
(※変動費率 = 変動費 ÷ 売上高)
計算例:月間売上高が140万円、固定費が60万円、変動費が84万円の場合
変動費率 = 84万円 ÷ 140万円 = 0.6(60%)
損益分岐点売上高 = 60万円 ÷(1 − 0.6)= 150万円
この場合、損益分岐点は150万円なのに対し、実際の売上高が140万円であるため、月間で10万円の赤字が出ていることになります。赤字を解消し黒字化するには、不足している10万円分の売上を上乗せするか、経費を見直してコストを削減する必要があります。
損益分岐点を把握する重要性
損益分岐点を把握することで、赤字と黒字の境界が明確になり、収益確保に向けた目標設定や経営判断の指標としても活用できます。売上が損益分岐点を下回っている場合には、メニュー価格の見直しや経費の削減、集客施策の強化などの対策を早期に検討できるため、赤字が拡大する前に軌道修正を図ることが可能です。
また、店舗が最低限確保すべき売上高が明確になると、毎月の売上と比較しながら資金繰りの予測が立てやすくなり、資金ショートのリスクを未然に防ぐことができます。このように、損益分岐点を正しく把握することは、飲食店の経営を安定させるために欠かせないステップといえるでしょう。
まとめ
飲食店を経営するうえで、利益の確保は必須の課題です。利益率が低い原因を特定し、その改善に向けた施策を着実に実行していくことが、安定した店舗運営につながります。まずは、本記事で解説した利益率や損益分岐点の計算方法を参考にしながら、自店の現状を見直してみてはいかがでしょうか。
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