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飲食店の集客方法
飲食店が業務委託をするメリット・デメリットとは?雇用契約との違いを詳しく解説
飲食店で働き手と契約を結ぶ際、オーナーが選ぶ契約形態は大きく分けて「雇用契約」と「業務委託契約」の2つがあります。オーナーは各契約形態を十分に理解するとともに、自店の現状や今後の方向性に即した人材活用の方法を検討することが重要です。
この記事では、こうした契約形態の基礎知識に加え、飲食店が業務委託をするメリット・デメリットについて詳しく解説します。
飲食店オーナーと働き手との契約形態
飲食店におけるオーナーと働き手との契約形態は、主に「雇用契約」か「業務委託契約」のいずれかになります。
- · 雇用契約
→ 働き手を従業員として雇い、その対価として賃金の支払いを約束する契約
- · 業務委託契約
→ 外部の事業者に委託し、仕事の成果や業務遂行に対して報酬を支払う契約
- ただし、契約書上は「業務委託契約」とされていても、その実態が雇用関係に近い場合は「雇用契約」と扱われる可能性があります。オーナーが具体的な業務指示を出すなど、受託者が自分の裁量で働けていない場合は「偽装請負」とも判断されかねません。
- 飲食店オーナーが雇用契約と業務委託契約の違いを正しく理解することは、適切な人材活用やトラブルの未然防止につながります。具体的にどのような契約形態なのか、次項より各契約の内容や違いについて詳しく解説していきます。
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雇用契約とは
- 労働者の雇用は民法第623条に規定されています。
雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。
- 引用:民法|e-GOV法令検索
- 雇用契約とは上記の規定を満たす契約を指し、具体的には「①労働者が使用者のもとで労働に従事すること」「②労働の対価として使用者が労働者に賃金を支払うこと」の両方を約束する契約をいいます。雇用契約においては労働基準法や労働契約法などの労働法が適用され、労働者は法的保護のもとで働くことになります。
- なお、雇用契約は労働者と使用者の合意のみで成立しますが、契約内容については書面で確認できるようにするのが望ましいとされています。
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雇用契約を結ぶ際の必要書類
- 労働者の雇用にあたっては「労働条件の明示」が必須であり、労働条件通知書を書面で交付することが義務付けられています。
- 雇用契約書に関しては法律上の作成義務はありませんが、雇用条件に関する労使間のトラブルを防ぐ観点から書面を取り交わすのが望ましいでしょう。労働条件通知書と雇用契約書の兼用も可能であり、「労働条件通知書 兼 雇用契約書」として交付する企業もあります。
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業務委託契約とは
- 業務委託とは「自社の業務を外部の企業や個人に委託すること」をいいます。委託者と受託者の間に指揮命令関係はなく、受託者は自分の裁量で仕事を遂行し、委託者は業務の成果物や役務の提供に対して報酬を支払います。受託者は「労働者」ではなく、企業に雇用されずに働くため、各種労働法は適用されません。
- 飲食店における業務委託の具体例は次のとおりです。
- ・店舗運営
- ・調理・ホール業務
- ・デリバリー業務
- ・メニュー開発
- ・メニューブックの作成
- ・SNS運用などの広報活動
- これらの業務を外部に委託する際は「業務委託契約」を結ぶのが一般的ですが、法律上「業務委託契約」という名称は存在しません。業務委託の内容によって「請負契約」か「委任(準委任)契約」のどちらかを締結することになります。
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請負契約とは
- 民法第632条に規定される「請負」の定義は次のとおりです。
請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
- 引用:民法|e-GOV法令検索
- 請負契約では「仕事の結果(成果物)」が報酬の基準となり、完成した成果物に対して報酬が支払われます。
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委任(準委任)契約とは
- 民法第643条に規定される「委任」の定義は次のとおりです。
委任は当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。
- 引用:民法|e-GOV法令検索
- 「準委任」については民法第656条に規定されており、法律行為でない事務の委託(=準委任)を行う場合も委任と同じルールが適用されます。どちらも「業務の遂行」を報酬の基準とし、成果物の完成が求められる契約ではありません。
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請負契約と委任(準委任)契約の違い
- 請負契約と委任(準委任)契約の違いを下表にまとめました。
請負契約
委任(準委任)契約
指揮命令権
なし
なし
報酬の基準
成果物
業務遂行
報酬発生時期
引き渡し時
完了時
成果物の完成責任
あり
なし
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業務委託契約を結ぶ際の必要書類
- 業務委託契約を結ぶ際は、委託業務の内容や契約期間、報酬などを記載した「業務委託契約書」を作成するのが一般的です。一部の取引を除き、原則として契約書の作成義務はありませんが、契約内容を書面で明確にすることでトラブルの未然防止につなげられます。
- 契約書を作成する際は一般的に「業務委託契約書」としてまとめるケースが多いものの、その実質的な内容が「請負契約」と「委任(準委任)契約」のどちらに該当するかは業務の目的や性質によって判断することになります。
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雇用契約と業務委託契約の違い
- 雇用契約と業務委託契約は「働く人が労働者かどうか」が大きな違いとなります。
- 雇用契約では、働き手は雇用主の指揮命令に従って働き、法律上の「労働者」として労働時間や業務内容などを細かく管理されます。一方、業務委託契約における働き手は労働者ではなく、独立した事業者という位置付けです。これにより労働法の適用を受けず、業務の進め方や時間配分などは自分の裁量で決められます。
- この判断において重要なのが「使用従属性」の有無です。働き手が雇用主の指揮命令下にあり、その対価として報酬が支払われる場合は「労働者」として扱われ、契約書の名称にかかわらず実質的に「雇用契約」と判断される可能性が高くなります。
- 《雇用契約と業務委託契約の違い》
雇用契約
業務委託契約
雇用主
就業先
なし
指揮命令権
あり
なし
提供するもの
労働力
成果物/業務遂行
勤務時間の制約
あり
なし
労働法上の保護
あり
(労働法が適用される)
なし
(労働法が適用されない)
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飲食店が雇用契約を結ぶメリット・デメリット
- 雇用契約は働き手を従業員として雇い、労働力の対価として賃金を支払う契約です。
- ここでは飲食店が雇用契約を締結するメリット・デメリットを紹介します。
新しい飲食店の運営を提案する「店タク」では、飲食店オーナーが独立志向のある職人に店舗運営を委託することを推奨しています。
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雇用契約のメリット
- 飲食店が雇用契約を結ぶメリットは以下のとおりです。
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オーナーの方針を反映できる
- 雇用契約における働き手は「労働者」であり、企業側の業務指示や労務管理を受けながら働きます。飲食店にとっては、提供するメニューや接客スタイル、オペレーション、お店の雰囲気づくり、営業時間など、さまざまな面で直接指示を出すことができるため、オーナーの方針や意向を反映させやすいメリットがあります。
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業務の知識やノウハウが定着する
- 雇用契約を結ぶことで、長期的な視点での人材育成が可能となります。コストはかかるものの、オーナーが直接指導したり現場での経験を積ませたりできるため、店舗独自の接客スタイルやオペレーションが着実に根付いていきます。こうした知識やノウハウが定着すると、新たな人材への教育もスムーズとなり、長期にわたって一定のクオリティを保ったサービスを提供し続けることができるでしょう。
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雇用契約のデメリット
- 一方で、飲食店が雇用契約を結ぶと以下のようなデメリットが生じる可能性もあります。
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本来のパフォーマンスが発揮されにくい
- 雇用契約を結ぶと、従業員はオーナーの指示に従って業務を行うため、個々の裁量は限られがちです。たとえ腕のある料理人と出会えても、既存のメニュー構成やオペレーションなどオーナーの方針に沿った業務を任せる場合には、優秀な人材が持つスキルやノウハウを十分に活かせなくなるかもしれません。本来のパフォーマンスが発揮されないことで、本人のモチベーション低下を招くとともに、店舗全体としても集客や売上が伸び悩む可能性があります。
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労務管理に手間がかかる
- 飲食店が雇用契約を結ぶ場合、従業員の勤怠管理や給与計算、社会保険手続き、入退社対応など多岐にわたる労務管理が発生します。これらの業務には正確さが求められ、労働基準法など各種法律に則った適切な管理を行わなければなりません。
- 加えて、労働環境の変化とともに頻繁に法改正が行われるため、常に最新の情報を確認しながら確実に対応していくことが求められます。このような労務管理に手間がかかることで、オーナーが本来注力すべき店舗運営にかける時間が削られてしまう可能性があります。
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飲食店が業務委託をするメリット・デメリット
- 業務委託は外部に仕事を委託し、その成果や業務遂行に対して報酬を支払う契約です。
- ここでは飲食店が業務委託をするメリット・デメリットを紹介します。
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業務委託のメリット
- 飲食店が業務委託をするメリットは以下のとおりです。
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経験者のノウハウをすぐに活用できる
- 現時点で売上低迷や人材不足といった課題を抱えている飲食店では、経験者のノウハウをすぐに取り入れられる業務委託が有効な選択肢となります。腕のある職人や独立志向のある人材に業務を委託することで、開店当初から即戦力として存分にパフォーマンスを発揮してもらえるため、飲食店が直面するさまざまな課題の解消につながります。競合がひしめく飲食業界においては、自らのスキルやノウハウを活かしてすぐに活躍できる人材を確保することが不可欠です。
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採用・育成コストがかからない
- 飲食店の運営を外部に委託する場合、オーナーが自ら採用活動を行う必要はありません。採用条件の洗い出しから求人募集、書類選考、面接、入社対応など、一連の活動をすべて委託した人材に任せることができます。加えて、業務委託ではノウハウを持つ人材に業務を任せることが前提であり、オーナーが育成や指導を行わないため、その分のコストを抑えられるメリットもあります。
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業務委託のデメリット
- 一方で、飲食店が業務委託をすると以下のようなデメリットが生じる可能性もあります。
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オーナーの方針とのズレが生じやすい
- 業務委託契約においては、委託側(飲食店)と受託側(働き手)との間に指揮命令関係がありません。これにより店舗の経営方針やサービスのスタイルといったオーナーの意向が十分に反映されず、方向性のズレが生じる可能性があります。
- こうしたズレを避けるためには、店舗運営を完全に任せるという判断も一つの解決策となります。責任感が強く、自らの裁量で成果を出す意欲の高い人材に委託することで、長期にわたって安定した店舗運営を目指せるでしょう。
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飲食店側にノウハウが蓄積されにくい
- 業務委託は即戦力を確保できる一方で、優秀な人材が持つノウハウが店舗側に残りにくいというデメリットもあります。店舗運営を任せる場合には、委託先の人材が契約終了とともに店舗を離れると、そのノウハウも現場から失われてしまうかもしれません。これを防ぐには、業務マニュアルの作成や定期的な報告・ヒアリングの実施など、業務や運営に関する情報を店舗内に残せる仕組みを整えておくことが重要です。
人材不足や売上低迷など、飲食店オーナーが抱える数々の課題は「職人と組む」ことが有効な解決策となります。店タクでは腕のある職人に活躍できる場を提供し、お店の繁栄につなげています。
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まとめ
- 飲食店における契約形態は、主に「雇用契約」と「業務委託契約」の2つに分かれます。それぞれの契約には異なる特徴やメリット・デメリットがあり、実際の働き方によっては「名目上の業務委託契約が雇用契約と判断される」こともあり得ます。飲食店オーナーが安定した店舗運営を行うためには、自店の現状や将来の展望を踏まえて、最適な契約形態を選択することが大切です。
店タクは飲食店オーナーが抱える店舗運営の悩みを「職人と組む」ことで解決するサービスです。「雇う」でも「貸す」でもない新しい飲食店の運営に興味のある方は、店タクまでお気軽にお問い合わせください。