値上げによる客離れを防ぐには?飲食店が実践すべき対策を徹底解説 | 飲食店運用のヒント:店タク

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    原材料費や人件費などのコスト増加を背景に、メニュー価格の値上げに踏み切る飲食店が増えています。昨今の状況から顧客も一定の理解を示しているものの、値上げをきっかけに客足が遠のくケースも少なくありません。

    この記事では、値上げによる客離れを防ぐために飲食店が実践すべき対策について詳しく解説します。「客離れが不安で値上げに踏み切れない」「値上げをした途端に客数が減ってしまった」などの課題を抱えている方はぜひ参考にしてください。

     

    飲食店における値上げの状況と顧客の反応

     

    帝国データバンクが実施した「上場する主要外食100社の値上げ動向調査」によると、2022年は58社、2023年は49社、2024年は26社がメニュー価格の値上げを実施しました。原材料費や人件費の高騰を背景に、2022年に外食メニューの値上げが本格化したものの、2024年にかけてはその動きが徐々に鈍化しています。

    それでは、飲食店を利用する顧客は近年の“値上げラッシュ”をどう感じているのでしょうか。

    1. ぐるなびが2022年に実施した調査によると、外食の値上げは「仕方がない」が54.9%、「(値上げは)当然」が17.7%という結果になりました(回答者:20代~60代のぐるなび会員1,000名)。顧客の多くが飲食店の値上げを実感しつつも、7割以上が一定の理解を示していることが読み取れます。こうしたデータを見る限り、客離れを防ぐための対策は求められるものの、値上げ自体を過度に恐れる必要はないといえるでしょう。

      参照元:

    2. 主要外食100社、今年「値上げ」3割にとどまる 昨年から社数半減、値上げの勢い鈍化(株式会社帝国データバンク)|PR TIMES

      【ぐるなびリサーチ部】外食の値上げに関する調査|株式会社ぐるなび

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    5. 飲食店の値上げで客離れが起こる理由

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    7. 飲食店において、メニュー価格の値上げが原因で客離れが生じる主な理由に「ステルス値上げ」があります。これは、メニュー価格を引き上げたにもかかわらず、その事実を顧客に明示せず、黙って提供を続ける行為を指します。値上げを隠そうとする姿勢は反感を買いやすく、顧客からの信頼を失い、結果的に客離れにつながってしまいます。

      ステルス値上げと混同されがちな言葉に「実質値上げ」もありますが、これは内容量を減らす一方で価格を据え置く手法です。実質値上げの中でも、顧客に説明も告知もしないまま一方的に値上げをする行為が「ステルス(=こっそり行う)値上げ」なのです。逆に言うと、内容量の変更を明示したうえで価格を据え置くのであれば、それはステルス値上げではなく「実質値上げ」といえます。

      先述したように、値上げに対して一定の理解を示す顧客は多いものの、その実施方法が不誠実では両者の信頼関係が崩れかねません。事前に価格改定を告知し、その理由を正直かつ丁寧に伝えることが、顧客からの理解と支持を得る鍵となります。

     

    1. 飲食店が値上げによる客離れを防ぐ方法

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    4. 一定数が飲食店の値上げに理解を示しているとはいえ、可能な限り客数を減らさない値上げを行う必要があります。先述のぐるなびの調査では値上げによる利用頻度の変化についても質問しており、今後の利用は「やや減る」38.6が%、「減る」が13.5%という結果となりました。値上げはある程度仕方ないと思いつつも、半数以上が利用頻度を減らす傾向にあるのが実情であり、飲食店としても客離れを最小限に食い止めるための対策が必要です。

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      飲食店が値上げによる客離れを防ぐためには、顧客の納得感や満足度を維持・向上させる工夫が欠かせません。ここでは、実践的かつ効果的な具体策を3つ紹介します。

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    7. 値上げの告知

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    9. 飲食店が値上げをする際には「事前の告知」が重要です。値上げそのものよりも、それを知らせずにこっそりと価格を変更する「ステルス値上げ」が、顧客の不信感と客離れを招く要因となるからです。

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      価格改定にあたっては、店内の掲示物やメニュー表、SNSなど、あらゆるチャネルを使って早めに告知し、顧客の心理的な抵抗感を和らげることが大切です。また、単に「値上げをします」と伝えるだけでなく、「原材料費が高騰しているため」「品質やサービスの維持・向上のため」など、値上げの背景を丁寧に説明することで、顧客の理解と納得を得やすくなります。

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    12. 付加価値の提供

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    14. 値上げを実施する際には、価格の上昇分に見合った付加価値の提供が欠かせません。顧客に価値を感じてもらうことは、値上げ後の継続利用やリピートにつながる重要なポイントとなります。

      例えば、食材のグレードアップや盛り付けの工夫、店内環境の改善など、目に見える形での価値提供が効果的です。また、待ち時間の短縮や注文システムの導入、Wi-Fi・充電設備の提供といった利便性の向上も、顧客満足度を高める要素となります。このような付加価値を通じて、お客様に「価格は上がってもそれ以上の価値がある」「高くなったけれど満足度も上がった」と感じてもらうことが大切です。

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    16. 接客力の向上

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    18. 価格に対する納得感は、スタッフの接客力によって大きく左右されます。客離れを防ぐために商品の価値を上げる努力をしても、お店の対応が悪ければ次の来店にはつながりません。特に値上げをした直後は顧客の目が厳しくなるため、スタッフの接客対応がリピート率に直結します。接客の印象が良ければ、多少値上げをしても「この店ならまた来たい」と思ってもらえる可能性が高まります。

      スタッフの接客力を向上させるためには、単にマナーや言葉遣いを改善するだけでなく、顧客視点に立った対応を徹底することが求められます。スタッフ間でサービスの基準や対応マナーを共有し、定期的にロールプレイングによる接客訓練やベテランスタッフの同行OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を行うなど、現場ですぐに反映できる実践的なトレーニングが効果的です。

     

    1. 値上げ対象メニューの選び方と価格設定のポイント

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    3. 値上げを検討する際は、可能な限り顧客への影響を抑えながら、自店の利益も無理なく確保できるよう見直しを行うことが大切です。ここでは、値上げの対象とするメニューの選び方と、納得感のある価格設定のポイントを紹介します。

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    5. 値上げ対象メニューの選定基準

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    7. 飲食店が価格改定を行う際、顧客からの理解を得やすいのは「原材料費が上がったメニューのみ値上げする」方法です。すべてのメニューを一律に値上げするよりも、現在の価格設定で利益が圧迫されているメニューに限定して価格の見直しを行うほうが、顧客としても値上げを受け入れやすくなります。また、注文頻度が比較的低いメニューも、価格変更によるインパクトが少なく、値上げ対象の候補に入れやすいでしょう。このように顧客への影響を最小限に抑えつつ、利益率を改善できるメニューを選ぶことが重要です。

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    9. ただし、注文数の少ないメニューを値上げしても、全体の売上や利益率の改善にはつながりにくいという課題もあります。また、近年は多くの業種で価格改定が常態化しており、消費者の値上げに対する抵抗感も以前ほど強くありません。こうした状況を踏まえると、特に全体的なコストが上昇している店舗にとっては、メニューごとの調整よりも一括改定のほうがスムーズに運用できる可能性があります。
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    11. 価格設定のポイント

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    13. 飲食店の価格設定は、まず目標とする原価率を意識することが大切です。原材料費や人件費の上昇分を反映しつつ、顧客が受け入れやすい価格帯を見極める必要があります。そのためには、一度に大きく価格を引き上げるのではなく、段階的な値上げを検討するのも一つの方法です。徐々に価格を調整することで、顧客の心理的な抵抗感が少なくなり、客離れのリスクを軽減できます。

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      なお、値上げ幅は最大でも15%程度に抑えるのが無難とされています。これ以上の値上げは顧客に「割高」と感じさせてしまい、近隣の競合店との価格差も明確になりやすいため、比較検討の末に離脱されるリスクが高まります。

     

    1. 飲食店が値上げを伝える方法と客足を伸ばすコツ

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    4. 飲食店が価格を改定する際、重要なのは「どのように顧客へ伝えるか」という点です。一般的に「値上げ」はネガティブな印象を持たれやすいものの、告知のタイミングや方法、伝え方の工夫次第で、顧客の受け止め方は大きく変わってきます。

      ここでは、客離れを防ぐための効果的な告知方法と客足を伸ばすコツを紹介します。

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    6. 値上げを伝える時期

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    8. 値上げを実施する際は、最低でも1か月前には顧客に告知するのが望ましいでしょう。突然の価格改定は顧客の不信感を招き、客離れの原因になりかねません。誠実な姿勢で余裕をもって周知することが、顧客との信頼関係の維持につながります。

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    10. お客様への告知方法

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    12. 顧客に値上げを伝える方法はさまざまあり、複数の手法を組み合わせて幅広く周知することが重要です。店内の掲示物やメニュー表、チラシなどによるアナログな告知に加え、SNSやLINE公式アカウント、ホームページなどのデジタルチャネルを活用した情報発信も効果的です。

      さらに、常連客や対面での接客が中心となる店舗では、会計時にスタッフが直接声をかけてお知らせすることも、誠意のある対応として好印象を残せるでしょう。このように、複数の手法を活用して丁寧に情報を伝えることが、顧客の納得感と安心感を高め、値上げによる客離れを防ぐことにもつながります。

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    14. 値上げをしても客足を伸ばす工夫

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    16. 値上げによるネガティブな印象を和らげるには、顧客の満足度を高める「プラスの体験」を提供するのが有効です。例えば、価格改定に合わせて割引クーポンを発行したり、ドリンク無料券やトッピングサービス券を配布したりすることで、価格改定への不満を軽減しながら再来店のきっかけを創出できます。

      ただし、こうした「お得な特典」はあくまで一時的な集客効果にとどまることが多く、継続的に客足を伸ばすには、より本質的な取り組みが欠かせません。料理・空間の品質向上や接客力の強化など、店舗の根幹となる価値を見直すことが、長期的な集客やリピーターの獲得につながります。

     

    1. 客離れを防ぐには値上げ後のフォローも重要

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    3. 価格改定は「告知して終わり」ではなく、値上げ後のフォローによって顧客との関係を維持・強化することが求められます。特に、日常的に店舗を利用している常連客は、多少の値上げには比較的寛容な傾向があります。飲食店が値上げの影響を最小限に抑えるには、こうした顧客との関係性を深め、価格に左右されにくいリピーターを育てていくことが重要です。

      客離れを回避する値上げ後の対応には以下のようなものがあります。

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    5. 再来店を促すサービスを用意する

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    7. 値上げ後の客離れを防ぐには、顧客が再び足を運びたくなるような「来店の動機」をつくることが大切です。例えば、期間限定メニューの提供やポイント特典の強化、次回来店時に使える割引クーポンの配布などが効果的です。特に、常連客には「いつもありがとうございます」といった感謝の言葉を添えると、店舗側の誠意が伝わりやすく、より強い信頼関係の構築とリピート率の向上につながります。
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    9. お客様の声を集めて改善に活かす

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    11. 価格改定の影響を最小限に抑えるには、料理や接客、店内の雰囲気など、価格以外の価値を継続的に高めることが求められます。そのためには、口コミやアンケート、接客時の会話などを通じて顧客の声を拾い上げ、そこから得られる気づきをもとにメニューの見直しやサービスの改善を図ることが大切です。価格に見合う顧客体験を提供できていれば、値上げ後に客離れを招くことはなく、むしろ長期的なリピーターの獲得につながります。

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    2. まとめ

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    4. 原材料費や人件費、光熱費などの高騰により、多くの飲食店が価格改定を避けられない状況にあります。値上げをすると客離れが起こるのではないかと不安に感じるかもしれませんが、一定数の顧客は価格改定への理解を示しており、飲食店としても過度に怯える必要はありません。とはいえ、できる限り客数を減らさないためには、丁寧な告知や付加価値の提供、接客力の向上といったきめ細やかな対応が必要です。値上げをしても「また来たい」と思ってもらえるよう、顧客に寄り添う誠実な姿勢が求められます。

       

       

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